Review from Visual Novel.Info (Japanese version)


(This page is the English version. The Japanese version is here.)
(こちらの記事は日本語版です。英語版はこちらです。)


こんにちは、Klast HalcことcrAsmの倉下です。

先日(6月30日)、Visual Novel.info様より「転生してない悪役令嬢はまだ運命を知らない」のドイツ語のレビューをいただきました。折角なので多くの方にご覧いただければと思いまして筆者の方に英訳を依頼しました。また、英語版を更に倉下が日本語訳しました。いつも有料作品や商業作品のレビューを書かれているサイト様なので、本作のようなフリーゲームを取り上げていただいた際には驚きました。大変貴重なレビューですので、ぜひご覧ください!

  • 若干ですがネタバレがあります: プレイ前に読んでも大きな問題は無いと思いますが、不安な方はプレイ後にご覧ください
  • 本文中の[カッコ内]は原文には無い注釈です
  • 画像やリンク先は原文のままです
  • 割と意訳なので、読める方はオリジナルのドイツ語・英語版もぜひご覧ください

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itch.ioは妙なサイトです。数年前の創業以来、このストアは様々なビジュアルノベルやその他の同人ゲーム(日本のDL-Siteで入手できるような作品)を提供しています。ゲームのクオリティにはかなりバラつきがあり、このストア内を探したところで必ずしも良い作品に出会えるとは限りません。itch.ioでは、製作者は誰でも作品を投稿することができ、プレイヤーはゲームを購入したり無料で(あるいは寄付金を払って)遊んだりできます。このような価格設定ポリシーはHumble BundleのコンセプトやGroupeesのサービスに似ています。


倉下 遼は日本の小さな同人ゲーム製作者であり、私たちはゲームの翻訳の話を通して知り合いました。『転生してない悪役令嬢はまだ運命を知らない』は倉下の処女作です[itch.io投稿作品としては]。によるドイツ語翻訳は予算の都合でまだ実施できていませんが、いずれかの機会に取り組むつもりでいます。

概要

プレイヤーはアクーヤクスキー家の令嬢であるノーラとなります。政略結婚ではよくあるシーンですが、ノーラは父親が決めた婚約相手である、この国の第五王子シャイン・ノリカーエル・カルイヤッチャと面会します。容姿だけ見ると王子は煌びやかですが、見かけによらず裏の顔があるのでしょうか。


翌日、カルイヤッチャ国立魔法学校の入学式が行われます。そしてノーラは婚約者が他の女、イーコデワアル家のユリアナと遊んでいることに気付きます。王子はノーラとの婚約を破棄してユリアナに乗り換えたがっている…そんな噂をノーラは耳にします。王子のだらしない振舞いを許せるか否かは、プレイヤー次第です。


翌日、ノーラたちは初めての魔法の授業を受けます。その中で、6つの異なる魔法属性について学びます。誰もがいずれか1つの魔法属性を持っているとされています。光と闇は特に重要な属性であり、即ち陰と陽、善と悪です。不幸にもノーラは闇属性でした。ゆえにクラスメートに忌み嫌われ、見くびられてしまいます。婚約者であるシャインでさえ、もはや彼女との結婚を望みません。

彼女の闇属性の力は、彼女の日々の生活や結婚にどう影響するのでしょうか。

キャラクター





プロモーションビデオ

個人的な意見

先ほどの概要パートでの記述を見ると長い作品に見えるかもしれませんが、実際にはほぼあの3シーンしかありません。プレイ時間は約45分と非常に短く、倉下の能力の一端が現れているに過ぎません[=予算があればもっとボリュームのある作品も作れるのでは]。このゲームは倉下 遼が、あくまで趣味として予算をかけずに作ったものです。itch.ioからダウンロード又はブラウザ上でプレイすることができますので”間食”としては丁度良いのですが、短いゲームなのでレビューで取り上げられる内容も限られています。普段私たちがwebサイトに掲載している網羅的なレビューのようにはいきません。

つまるところ、プロットについて特別な点はこれといってありません。ノーラ・アクーヤクスキーという令嬢が居て、彼女が婚約者やイーコデワアル家ご令嬢との三角関係の上に立たされている、というだけの話です。残念ながら、ノーラ以外のキャラクターはこれといって好きになれる要素がありません。ユリアナはシャインにお熱ではないながらも彼に抗うわけではありません。王子に至っては、浮気はするし、闇属性がユリアナに嫌がらせしたなどと言ってノーラを非難するし、同情の余地もありません。

他に2人のキャラクターが居ますが、彼らは各々のエンディングで各々の役割を演じているに過ぎません。

技術

UIを見るとすぐにこのゲームがRen’Pyで製作されていることがわかります。まず目を引くのは左下、シチュエーションによって表情が変化するノーラのサイドイメージです。『Lucy got Problems [※微エロ注意][筆者が翻訳を担当した作品]でさえもこのような画像はありません。

こうしたサイドイメージはRen’Py製のゲームとしては幾分独特であり、良い追加要素です。ノーラが状況に応じて様々な表情を見せるので、より人間らしくドラマチックに見えます。

もう1点、itch.ioのブラウザ版もスムーズに動作します。クラッシュやメモリ不足は生じません。ただ、試してみて気になったのですが、異なるブラウザ間でのセーブデータの引き継はできないようです。

イラスト

このゲームが2人 (倉下 遼 & 飛石企画) だけで製作されていることを考えれば、itch.io投稿作品としては悪くありません。美麗な王子や高貴な女性といった、各キャラクターの立場に見合うイラストとなっています。立ち絵はイラストであり、写真加工で作られた背景からははっきりと目立ちます。倉下は旅行が好きだったかと思いますが、いくつかの写真は自分で撮影したもののようです。

(倉下本人曰く、何枚かはドイツのとある場所で撮影したそうです。)

個人的には、ユリアナはあまり印象に残りませんが、王子は見ているとダンガンロンパの十神白夜を思い出します。個人的にはノーラが一番好きです、特に顔を赤らめたり怒ったりする表情差分が印象的です。

音楽

タイトル画面の曲はゲーム内でも繰り返し流れます。メロディがヴァイオリンで高貴な雰囲気の曲です。他に3つのBGMがありますが、うち2つはおまけエンドを見ると解放されます。

エンディング

このゲームには5つのエンドと、これらをクリアすると現れる3つの追加エンドがあります。5つのエンドはいずれも意外なオチもしくはギャグです。3つの追加エンドはロマンティックであり、バッドエンド・通常エンド・グッドエンドと分類できます。追加エンドに進む選択肢にはアスタリスクが付いています。

ローカライズ

ここからは批評になります。倉下はこのゲームを自分自身で英訳しているのですが、その点をどう捉えるかです。多くのドイツ人とは異なり、たいていの日本人はあまり(或いは全く)英語を理解できない傾向があります。ですから、このゲームの翻訳も上手くはないだろうと予想はしていました。日本語の文章は平均点以上であるがゆえに、翻訳が上手くないのは残念です。倉下 遼自身も翻訳の出来が良くないことは認識していますが、それでも一応この作品を楽しむことはできると私は思います。私たちに[翻訳を]依頼してくれればなぁ…。


とにかく、理解できないような翻訳ではありません。”とても英語”です。というのも、日本人が会話型の英語を話せてもそれがどのような働きをするか正しく理解できていないときによく起きる典型的な間違いが見受けられます。脱字、「l」と「r」の混同などの他、最も目立つのは不定冠詞や前置詞がほとんど(又は全く)使用されていないという点です。例えば、"Oh, these flowers are beautiful. I want to look them forever"や"I expected gardener, but who was behind me was stranger"ですが、こうした例を見ると、他の日本人との居酒屋やカラオケでのやりとりを思い出します。[※1つ目は前置詞漏れの例で「look at」が正解、2つ目は不定冠詞漏れの例で「a gardener」「a stranger」が正解]

人によっては、私が弱い者いじめをしているとか、あるいはアングロサクソンの友人が言うところの「ぶら下がっている果物[=簡単に手に入るもの]」に手を伸ばしているとお思いになるかもしれません。ですが、私はこの翻訳を楽しめなかったわけではありません。それどころか、日本人にとっての英語の難しさをより深く理解することができました。私はこの知識を、大学や語学学校での指導教員の仕事にもきっと生かすことができます。

良い英訳とは言い難いですが、製作者の試み自体は称賛したいと思います。尚、itch.ioに寄せられているコメントも概ねポジティブなものばかりですので、製作者が頭を抱えることはないでしょう。


終わりに

タイトルの意味はよくわからないにしても(異世界に”転生してない”と明示する意図は何なのでしょうか)、『転生してない悪役令嬢はまだ運命を知らない』というタイトルは他作品の洗練されたタイトルの派生のようで面白いと思います。

エンディングも英訳も笑えると思いますし、わずか2人で製作された乙女ゲームとしては悪くありません。ただ、トップクラスのビジュアルノベルではありませんので、『Fate Stay/Night』や『CrocApoca!!』(間もなくリリース)のようなクオリティは期待しないでください。

倉下 遼の今後の活躍を祈っています!

クレジット


あとがき


アンケート

最後に1点。itch.ioの作品紹介ページにプレイヤー向けのアンケートが設置されています。こちらです。回答を送れば倉下 遼の次回作への糧となることでしょう!

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以上です。誠実で忌憚のないレビューで、製作者として大変得るものがありました。レビュワーとしても勉強になります。レビュー内でも言及されている英訳のクオリティ問題ですが、まず先月に基本的な文法・スペルミスを校閲ツールで修正してv1.11にアップデートしました。さらに現在、英語としてより自然で読みやすい翻訳を目指してネイティブの方のご協力のもと改善を進めています。

改めまして、今回レビューを書いてくださったVisual Novel.infoのHataさんに大変感謝いたします。ありがとうございました。

そして本記事をご覧くださった皆様、最後までご覧頂きありがとうございます。どうかお体に気を付けてお過ごしください!

Get The Villainess Fate - 転生してない悪役令嬢はまだ運命を知らない

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